43. ひずみトーン、クリーントーン、ゴーストトーンの「タッチ」

STEP10 まとめ

それではここで、冒頭で紹介した「小野瀬のジャズ演奏の動画」をもう一度ご覧下さい。

動画:JAZZバッキング

この動画をよく見て、STEP 9の要領で、「剛性コントロール」を自分なりに分析してみて下さい。わかりやすいように、わざと極端に色々な剛性を織りまぜてありますので、ここまでのことが本当に理解できたなら、分析ぐらいはできると思いますよ!

剛性コントロールと、そのメカニズムを理解しないで、ただグリップで「音が変わるらしい…」と取り組んでみても、実演奏には、ほんの少ししか生かせません。ぜひ自分で何度も動画を見て研究し、実践してみてくださいね!

最後に

最後に、これから「スティック剛性コントロール」にトライしようという方のために、注意点を挙げておきます。

  • 必ず“支点移動グリップ”である「フリーグリップ」をマスターしたあとに、剛性コントロールの練習を行って下さい。なぜなら、日本的奏法に見られる「一箇所に支点を作って握る」という動作を行った時点で、物理的にどうしても「普通剛性」にしかなりえないからです。
    日本的奏法のままで、「剛性のコントロールをやっている」と思い込んでいるドラマーも多いようですが、「クリーントーンである普通剛性にしかなり得ない奏法」の中で、いくら剛性コントロールを行っても、ドラムから「不安定音」や「ひずみ音」は引き出せません。
    超一流ドラマー達が行なっている剛性コントロールは、「不安定音」や「ひずみ音」を音楽表現のために積極利用するというものですから、まったく次元が異なります。
  • スティック剛性コントロールの練習は、スタジオのPA等を使って、必ず「大音量で曲をかけて行なう」ようにして下さい。ドラム単体では、剛性コントロールでサウンドを変えても、マスキング効果がないため、その違いがかなり分かりづらくなります。(今回の動画で音楽と一緒に演奏しているのも、剛性コントロールによるサウンドの違いを分かりやすくするためです。)
  • 「低剛性」はヘッドにスティックが当たった瞬間に、どれだけ指の接触面積を減らせるかが、カギとなります。
    ほとんどのドラマーが自分では脱力しているつもりでも、「普通剛性」か、「やや高剛性」になっているのですよ!
    ですので、「想像を絶するくらいの極端な脱力」ができないと、スティックと指の接触面積を減らし、低剛性にすることは不可能です。 この一番難しい「低剛性のスティックコントロール」ができるようになる事で、音色の幅が増え、サウンドをより多彩に操れるようになるのです。
    安易にできたつもりになってしまっては、何よりあなた自身のプレイの幅を狭くするという事に気付いてくださいね!
  • また、この剛性コントロールで最も注意してほしいのは、「スティックがヒットした瞬間の剛性をコントロールする」、という点です。 「ヒットした瞬間」は時間的にとても短いため、どうしても、振り上げや振り下ろし時の剛性をコントロールしてしまいがちです。 振り上げや、振り下ろし時の剛性をいくらコントロールしたところで、出音には反映されず、何の意味もなくなってしまいます。
  • つまり、スティック剛性コントロールは…
    1. 支点移動を可能とするフリーグリップ
    2. 様々な入射角度からヒットできるモーラー奏法
    3. マスキング

…という3つの条件が揃っていないと、まず「練習自体」ができません。これらの条件を満たしていないのに、できたつもりになっている人の出音は、ただの強弱にしかなっていませんので注意して下さいね!


1980年頃、現在の日本的奏法が発表される以前には、ポンタさん、青山純さん、山木秀夫さんを始め、日本でも大勢、世界に誇れるドラマーを生み出していた時代がありました。

今、あなた達現代のドラマーがやるべきことは、その偉大な先輩ドラマーを超えることです。

現代ドラマーに忘れてほしくないのは、音楽表現も奏法も、バディ・リッチやジェフ・ポーカロなど、偉大なる先人達が原点だということです。

彼らが造りあげた「世界一優れた音楽表現のための奏法」は、現代ドラマー達に世界水準の表現力と、素晴らしい未来を与えてくれます!