43. ひずみトーン、クリーントーン、ゴーストトーンの「タッチ」

STEP8 不安定音(ゴーストトーン)も積極的に使おう!

ひずみのある高剛性、低剛性のアクセントトーンと対照的なのが、低剛性を使った「不安定音(ゴーストトーン)」です。スネアドラムを叩けば「ササササ」、タムなら「モモモモ」、という感じで、これだけではやはり音楽的に使えませんし、どんなに良い楽器を使っても、その意味がありません。

しかし、アタック音がほとんど無い「不安定音」は、本当に良くない音なのでしょうか?実はピーター・アースキン、トニー・ウイリアムス(マイルス時代)、フィリー・ジョー・ジョーンズ等、彼らのドラミングを完全コピーして演奏してみても、まったく違ってしまうのは、「不安定音」のタッチが出来ていないためなのですよ!!

また不安定音は、バンド演奏のマスキングの中では、叩いた瞬間に音が出るのではなく、マスキング効果によって、叩いてから「やや遅れて音が立ち上がる」のです。 ですので正確に言ってしまえば、「リズムが不正確に聴こえるはず」ですが、実際には聴き手側にリズムが狂って聴こえません。

その理由は「マスキングによって、音が滑らかに立ちあがるため」、聴き手側が最も気持ち良く聴こえる位置に、リズムを感じとってしまうからです。結果、よほどリズムが狂ってしまわない限り、「気持ち良いグルーヴ」に聴こえてしまうのです。

一流の役者の小声の台詞は、日本語にまだ慣れていない外国人はあまり聞き取ることができませんが、日本語に慣れた日本人は、その台詞に感動します。

ゴーストトーンを使わない演奏は、日本語にまだあまり慣れていない「中国人や韓国人」の日本語発音と同じではないでしょうか?

不安定音は、音楽の中でまさしく、役者の小声と同じ役割を受け持っているのです。

岩瀬立飛さんに脱帽!

by K’s MUSIC 主宰 小野瀬 健資

岩瀬立飛さんのグリップを見た事がありますか?カンのいい方なら、あのグリップに「何か意図的なもの」を感じた人も、多いのではないでしょうか?タッピさんは写真のように、指でワッカを作って、その中にスティックを差し込み、1〜2発叩くごとに、手の中でわずかにスティックを持ち直します。 そうする事で、低剛性にし、あの優しいタッチを可能にしているのです。正直「その手があったかー!」と最初に見た時は驚きました!日本のドラマーで剛性を操れるドラマーを見たのは、私の知る限り山木さん、ポンタさん以外では、タッピさんが初めてでした。

ただしこのワッカを作る方法は、スティック剛性の持ち替えがかなり難しくなりますので、高剛性を使いたい場合はあまり効果的ではないかもしれません。ですがタッピさんのように高剛性を使わない、小さめの音量のジャズをやるには、とても効果的な方法です!

これはあとから知った話ですが、タッピさんはピーター・アースキンについていた事があると聞きました。もしかしたら、彼に「アクセントじゃなくて、スティックの剛性なんだよ!」みたいなヒントをもらって、独自に考えぬいた結果、あの独特なグリップができあがったのではないかと思っています。ピーター・アースキンは、持ち替える際にロスの少ない「フリーグリップ」を使用するため、もっと普通の(?)グリップに見えますが、物理的にはタッピさんと、ほとんど同じになっているからです。

岩瀬立飛さんは、ピアノやベースのフレーズよりも、「歌い方」に敏感に反応する、素晴らしい音楽性を持ち合わせたドラマーさんです。そのタッピさんの頭の中のイメージを具現化する、大きな武器の一つが、「岩瀬立飛さんオリジナル」のスティック低剛性だと、私は思っています。

STEP9 実際の演奏の具体例

では実際に、剛性をコントロールしている動画をご覧下さい。ここで行っている動画は、次の譜面のように剛性をコントロールしています。リズムを叩いている時のライドシンバルの音も、注意して聴いてみて下さい。

動画:ロックビート

日本的奏法による演奏(前半)

スティック剛性コントロールを用いた演奏(後半)

スティックの太さを変えると、音も違うと感じている人は多いと思います。剛性コントロールを使えば、たった一種類のスティックでも、何種類ものスティックを持ち替えながら演奏するのと同じ、いや、それ以上の効果が得られるのです!

つまり、ひずみアクセント用に直径が17ミリのスティック、普通のクリーントーン用に14ミリ、弱音のゴーストトーン用に、10ミリのスティックを、瞬間、瞬間に使い分ける以上のものがありますよ!

ただし、スティック選びの際に、叩きやすさを優先していいという意味ではありません。前述の通り、どのスティックでも剛性を使う事により、音色をコントロールすることはできますが、やはりスティックごとに、音の質は異なってきます。

ドラマーは、音よりも叩きやすさでスティックを選ぶ人が、なぜか多いようです。例えばプロギタリストの場合、「弾きやすさより」も「音」でピックを選ぶことが目立ちます。ドラマーもそれを見習って、「音」でスティックを選んでみてはいかがでしょうか?きっと世界が広がると思いますよ!シンバルだけでなく、スネアもタムも、スティックで音が変わってしまうんですから!

ドラムという楽器は普通に叩けば、クリーントーンしか出ないように作られています。 逆に言えば、どんなに、ひずみトーンやゴーストトーンだけを使って演奏しようとしても、クリーントーンが必ずどこかで入ってしまいます。 ですから、クリーントーンの練習は必要ないのではないでしょうか?

One Point Advice

この動画の前半部分のように、フル、ダウン、タップ、アップの理論に当てはまる多くの日本人ドラマーの分析、コピーは、みなさん簡単に行えると思います。 ですが、ジェフ・ポーカロやデニス・チェンバース、デイブ・ウェックル等、超一流のドラマー達をコピーしようとした時、フル、ダウン、タップ、アップに当てはまっていない事が多いため、コピーしても全然違ったニュアンスになってしまった経験はありませんか?

彼らは、「タップストロークの連続なのに、様々なアクセント」がついていたり、「ダウンストロークなのに弱音」だったり、「アップストロークの際、アクセントだらけ」だったり、等々、フレディ・グルーバーシステムや、フリーグリップシステム、そしてスティックの「剛性コントロール」を実践できないと、ニュアンスをコピーできないドラマー達なのです。

この動画では、小野瀬が「あえてわかりやすく実演」していますので、それをヒントにして、もう一度チャレンジしてみて下さいね!

NEXTまとめ:これから「スティック剛性コントロール」にトライしようという方のために