42. フリーグリップと、しゃっ骨&とう骨
いきなりですが、まず次の動画をご覧下さい。
動画:デニス・チェンバース式超高速シングルストローク
この動画の中で行われている32分音符の高速連打は、全てシングルストロークで行っています。スティックがほとんど振り上がっていないにも関わらず、パワーが出ているのがお分かりいただけるでしょうか?(あえてシングルストロークの時はリムショットを使用していません)
この動画はK’s MUSIC主宰の小野瀬健資が、デニス・チェンバースの肘から先にある、しゃっ骨、とう骨と、5本の手の骨の使い方を再現して演奏したものです。
主宰の小野瀬は普段このようなドラミングは全くしませんが、ドラミングアドバイスの為にあえて再現してもらいました。
ここで言う「再現」とは、見た目のフォームやラインを真似するというものではなく、体内再現、つまりは、骨や関節や腱の使い方、さらには重心位置等の体内で起こしている運動を再現化するという、極めて人体力学的な再現方法です。
このような超高速シングルストロークを習得する場合、日本では、やれ手首のスナップ強化が必要だの、シングルストロークで使われる筋肉を鍛える事が必要などという、鍛錬系の発想で方法論が説かれていますが、その方法論でパワーとスピードを両立できたドラマーは果たして本当にいるのでしょうか?
デニス・チェンバースも小野瀬も、ツライ鍛錬を積んで死ぬほど練習をして(笑)このようなプレイを可能にしたのでしょうか?
デニス・チェンバースは、巨漢で筋力が相当強いから、このようなプレイが可能だと思いこんでいる人が多いようですが、実際は身長160センチほどのとても小柄な人です。(間近で彼を見たことがある人は、あまりのギャップにびっくりしませんでしたか?)
彼の場合、13インチのスネアを中心にして、12インチのハイハット、メインタムは10インチはおろか8インチを使用することも多いので、ビデオ等では遠近感が狂って(笑)身体がとても大きく見えてしまうだけなのです。
ちなみに小野瀬は「これはモーラー奏法の応用だから、筋肉や手首のスナップは全く関係ないよ〜」と笑って、練習もせず、ほんの2テイクで撮影は終了しました。
今回はデニスチェンバースの十八番フレーズのタネ明かしをしてしまって、彼には大変迷惑な話かもしれませんが(笑)、しゃっ骨&とう骨の動きを中心に、前回のフリーグリップの応用を解説していきたいと思います。
モーラー奏法で均一なストロークは無理なんじゃないの?
A.モーラー奏法を身に付ける初歩の段階ではアクセントの入ったストロークから練習するのが効果的です。しかし、それだけではありません。全盛期にあったトニー・ウイリアムスなどは、高速シングルストロークやダブルストローク、シンバルワークに至るまで、すべてモーラー奏法で行っていたんですよ!
ただ、国内では実戦応用できる人が皆無に等しいため、モーラー奏法の初歩の段階の認識から抜け出せないのが現状のようです。そのため「モーラーでは必ずアクセントが入ってしまう」という認識が一般では多いようです。
ヒント:スティックのラインや見た目よりも、身体の内部、つまり骨や関節や腱などに目を向けよう!
読み進める前にお願いですが、まだ前回のドラミングアドバイス「フリーグリップシステム」を読んでいない方は、必ず読んでから今回の内容を読み進めてくださいね!
今回のキーワードは「フリーグリップ・システム」における肘から先の骨の使い方です。