06. 商業演奏法の重要性

音楽を芸術と商業とに分けて考えるのは私自身とても不本意なのですが、今回は便宜上分けて話を進めます。

数年前、某有名音楽事務所のオーディションにセミプロやドラムスクール講師陣などのドラマーが数十人と集まりましたが全員不合格という結果でした。私は関係者という立場でその様子を見ていたのですが、ジャズ系,ロック系,ソウル系等、皆、個性豊かで高度なテクニックを持ったドラマーばかりでした。

なぜ全員不合格にされてしまったのでしょうか?

その理由は課題曲に対してジャズやロックなどの芸術音楽的アプローチしかできず、商業音楽に要求される表現性主体の演奏法が出来なかったからなのです。

皆さんは一般的に商業音楽と言われている無名アイドルやCM用BGMの曲などに注目し真剣に聴いたことがありますか?そして、そのドラミングを完全コピーしたことはあるでしょうか?

商業音楽の演奏法には一種独特な法則が存在し、主に音色感,エネルギー感,無機質感,スケール感,解像度,ドライブ感等の中からどれを優先表現するかという演奏方法が重要になります。

一般的に言われる「シンプルな演奏」とはあくまで譜面上だけの話で、優先表現がなければアマチュアレベルの歌ものバンドにしか通用しません。まして芸術的音楽だけを追及し、そのグルーヴとサンバキックやパラディドル等を使った難しいフレーズが上手に叩ければ仕事が取れると思い込んでいるならば、それは全くの勘違いだと断言しましょう。

プロ=華々しくカッコイイ職業というわけでは決してありません。本気で音楽を職業にしたいと考えているならば、一流ミュージシャン達でさえ仕事として演奏している商業音楽にも目を向けてみることです。

商業演奏法を完全に身につけてこそ音楽を職業に出来るのです。

1996年11月

K’s MUSIC ドラムスクール スティック