34. 指サスペンション・グリップ
今回は身体構造から“グリップ”について考えてみましょう。まずあなた自身の手を見てください。あなたの手には5本の指がありますね?では各指の長さはどこからどこまでですか?答えは「図1」です。いかがですか?おそらくあなたが考えていたよりもはるかに長くないですか?
では「手」はどこにあるのでしょう? 実は「手」や「手のひら」は生活や文化的に存在するだけで、骨格的にはどこにも存在していません。「手首から先」にあるものは「指」だけです。
指先の骨はもちろん、手のひらの中に隠されている骨も私達は動かせるのです。この長い長い5本の指はスティックを持った時、打面のリバウンドに対して、ベンツやポルシェなどのクルマにみられるサスペンションアーム(路面の凸凹に反応してタイヤをうまく路面に接触させて乗り心地も良くする装置)のような働きができます。
この「指サスペンションアーム」を利用すればどんなに強く速く叩いても手のどこにもマメが出来なくなるばかりか、手首や腕に対しても打面の衝撃を緩和できるのでけんしょう炎や筋肉痛もありません。さらには打面の衝撃からおこる「ストロークのギクシャク感」も無くなるのでスティックワークも自然にスムーズになります。
グリップに限らず、奏法の原理やしくみを「目に見えるだけのとても表面的な部分」でいくら研究して解釈しても「本来あるべき奏法」にたどり着くのは難しいものです。ジェフ・ポーカロもヴィニー・カリウタもK’s MUSICも「指サスペンションアーム」を最大利用したグリップ(支点移動グリップ)が基本なのです。
2001年7月