50. STEP6 ドラマーのための古武術 人体力学

SECTION 5 腱ってナニ?

「腱」とは、医学的には手や足の指を反らせた時に浮き出てくるスジのような部分であったり、大きな筋肉の付け根の部分を指します。
(古武術・人体力学では、腱を使った身体運用法の事を指して「腱を張る」という表現を用いる事もあります。)

この“腱”を使いこなせると、動画でも見て頂いたように物凄いエネルギーを出すことができたり、相手に波のエネルギーをちゃんと伝える事ができたり、相手を無力化することができるようになります。

話が複雑になりすぎるので今回は割愛させて頂きますが、他にも「呼吸力」が古武術では大変重要な要素になります。(呼吸法の概要だけではありますが、過去に発表したドラミングアドバイス第4回第10回第17回第22回でご紹介しています。是非ご覧下さい)

そして、腱の使い方の秘伝には大きくわけて3種類の使い方があります!!

剛の腱

腕立て状態から持ち上げる

全力で腕を伸ばし合う

腕を掴まれた状態から引っ張る

柔の腱

指一本で投げる

指を掴まれ相手に波をかける

片手で引っ張る

抜きの腱

片足で立ち全力で押してもらう

思いっきり踏ん張った状態から飛ばす

この3種類の使い方の中で、「剛の腱」に関しては、その名前から「筋力を使っているんじゃないの?」と勘違いしてしまうかもしれません。
しかし、剛の腱でさえも、脱力が基本なのです!!

SECTION 6 剛の腱を徹底検証!!

手首から先を完全に脱力させて構えると、手はAのような形になります。
では、Bのグリップはどのように見えますか?
一見「力んでいる」ように見えますが、実は、脱力して“剛の腱”で構えています。

A 脱力のグリップ
B 剛の腱のグリップ

この「剛の腱」を使えば、次の動画のように信じられない硬さの拳をつくる事ができます。

動画 : 脱力と剛の腱

いかがでしょうか? 3台のカメラを使って同時に3方向から撮影していますので、黒木の片手に全体重が乗っているのが、はっきりと確認できると思います。黒木のように、細身で筋力がないような方でも、コツさえ掴めば、このように大変強靭な拳を作ることができますよ!

腱のチカラは本当に凄まじく、 正しく使えるようになるとこのように驚くような力が出せます。(例えばピアニストで、どう見ても筋肉のない痩せた細身の女性が、フルグランドピアノの重い鍵盤を使いこなし、激しい表現や音圧を出しているのを見て、あの力は一体どこから出ているのだろう?と不思議に思った事はありませんか?)

バディ・リッチ式「剛の腱」グリップ
ジェフ・ポーカロ式「剛の腱」グリップ

実はバディ・リッチやジェフ・ポーカロも「剛の腱」を使ったグリップを多用しています。(写真上参照)

彼らは「剛の腱」を使うことによって、他人には決してマネできない“音抜け”や“グルーヴ”を可能にしていたのです。「こんな身体の使い方があったのか!」とカルチャーショックを受ける方もいるかもしれませんが、
こういう特別なことをやっているからこそ、彼らのような特別なプレイを可能になるのです。

NEXT衝撃の事実!? 秘伝は教えてもらえない!?