41. フリーグリップシステム
STEP5 まとめ
いかがでしたか?今回は超一流ドラマー達と同じグリップをマスターする上での最初のステップとも言えるフリーグリップシステムについて解説しましたが、最後に、なぜK’s MUSICがフリーグリップをここまで推奨するかという、その重要な理由について書きましょう。
ここでは、自分に正直に問いただしてみて下さい。
メチャクチャ速いフレーズや、長時間のフルパワーが続くとき、楽に出来ていますか?本当は「ちょっと苦しい」「ちょっとツライ」と感じているのではないですか?
そのとき、なぜ、苦しいのか、ツライと感じるのか、その理由について考えた事はありますか?
最も簡単に小学校の「理科」で考えてみましょう。
日本的グリップと奏法では、スティックの先端に、まず遠心力をかけます。
すると、スティックを持っている支点部分に、遠心力と同等のエネルギーの「求心力」が必要となります。(「求心力」が無ければスティックは前方に飛んで行ってしまいます)
そこで、支点部分に指で圧力をかけて求心力を発生させます。
圧力をかけてスティックを振ることで、支点部分の皮膚に摩擦熱が発生します。その熱量は遠心力のエネルギーに比例し、強く叩けば叩くほど熱量は高くなり、低温やけどのような状態になって、皮膚に水泡をおこす事もあります。(小さい頃鉄棒で遊んで手の皮が剥けた事がありませんか?それと同じです)
摩擦によって発生した熱エネルギーが、スティックにかかる遠心力に対し、ブレーキの役割をしてしまう為、手首や腕を使ってさらに大きな遠心力をかける必要にせまられます。
最初に戻る(悪循環)
本来なら、エネルギーは、すべてドラムを鳴らすために使われるべきなのですが、日本的奏法では、そのエネルギーの大部分が、自分自身の身体に反動として返って来てしまうのです。
よくよく考えてみれば、スティックはとても軽いものです。片方のスティックで携帯電話の約半分という軽さです。その、軽い軽い棒切れを動かすために、やれ手首のスナップだの、筋肉を鍛えろだのと言うのは、おかしな話だと思いませんか?
つまり、貴方がスピードフレーズやフルパワー演奏で大なり小なり苦しく感じてしまうのは、自分自身が作り出してしまった慣性モーメントのエネルギーを
自分自身で受け止めなければならないために、苦しく感じているのですよ!
せっかく発生したエネルギーを、音楽演奏のためには利用できないばかりか、貴方は「自分自身が作り出してしまったエネルギーによって苦しんでいる」という事なのです。
それに対して、超一流ドラマー達が実演奏で使っている「フリーグリップ」は、慣性力までをも味方にして演奏するという、身体にとっての究極の「省エネ奏法」なのです。
では最後に、日本的グリップとフリーグリップシステムのパワーの差を動画でご覧下さい。
ボルトがガタつく寸前にチューニングされた、超ローピッチなフロアタムでの実演です。
動画:日本的グリップとフリーグリップのパワーの差 実演:小野瀬健資
いかがですか?フリーグリップシステムを使えば、通常ではあり得ないほどのローピッチのフロアタムでも大音圧で演奏することも可能なのです。
さて、超一流ドラマー達のグリップの「基本」は、意外な(!)所にありませんでしたか?
今回はフリーグリップシステムの初歩の説明にとどまりますが、支点移動を繰り返すわけですから、多種多様な応用グリップが存在します。(今回の動画も多少応用を効かせています)応用グリップに関しては、今後のドラミングアドバイスで詳しく説明していこうと思います。(繰り返しになりますが、グリップといえども身体の仕組みと切り離して考える事は出来ません)