41. フリーグリップシステム

STEP3 日本的グリップと、フリーグリップシステム

もうお分かりだとは思いますが、脱力して腕を上げ下げした場合、振り下ろした時の指の形は伸びていますよね?

フリーグリップシステムにおいては、ショットの瞬間は指が伸びているのが基本となります

この「ショットの瞬間に指が伸びる」という感覚は、今まで日本的奏法で練習を積んで来てしまった人ほど、違和感を感じてしまうでしょう。なぜなら、日本的奏法は、叩く瞬間に「指を握る」もしくは、振り上げたままの指の形をキープして手首で叩く(日本的リバウンド奏法?)のが基本となっているからです。

この事に代表されるように、フリーグリップと日本的グリップでは、共通点は全く存在しません。ですので、今からフリーグリップを習得しようという方は「全く別のグリップ」と、しっかり認識した上で練習する事をおすすめします。

指を離すとスティックが飛んで行ってしまうのですが?

A.フリーグリップの練習段階では、スティックが飛んで行くのを何度も経験しながら、脱力の感覚を覚えていくのが有効です。(デイヴ・ウェックルも奏法改革後は「調子の良い時ほどスティックが飛んでいってしまう」と言っていますね)

ただし、スティックが飛ぶ方向に注意して下さい。従来の日本的奏法にみられる「ヒジの屈伸」主体のストロークで指を離すと、力が前方向にかかるため、スティックは前に飛んで行きますが、「フリーグリップ」に有効なギャザリングモーション等に見られる上下運動+回転運動の動きでは、スティックは下方向に飛んで行こうとします。

すると、下にはドラムの打面があるので「スティックが跳ね返って再び手の中に戻ってくる」のです。(実際には手からスティックが離れるわけではありませんが、完全脱力が身に付いてくると、こういうイメージになります)ですから、スティックが下方向に飛んで行くのはOKです。

ともあれ、グリップといえども、身体の動きと切り離して考えることは不可能です。フリーグリップをマスターするためには、ストロークを始めとする、身体動作全体を変える必要があります。

以下、フリーグリップと、従来の日本的奏法の特徴を、箇条書きで挙げてみますので、練習する際の参考にして下さい。

フリーグリップシステム

見た目の違い

  • スティックを振り上げた時に指が曲がり、振り下ろした時に指が伸びるのが基本。
  • 振り上げた時と、振り下ろした時で、常に不定形にグリップが変化している。
  • 日本的グリップの支点である親指や人差し指(中指)等も常に動いている。

利点

  • 明確な支点が存在しないため、力を必要としない。
  • スティックの剛性コントロールが可能なため、遠近感のあるサウンド表現が可能。
  • フロアタム等、張力の弱い楽器でも、大音圧でのルーディメンツが可能。
  • ショット時の反動を、手の中にある全ての関節に分散するため、マメが出来たり腱鞘炎になったり等のダメージがない。

欠点

  • 日本国内では、ポンタさん・山木秀夫さんと、K’s MUSICのレッスン生以外でフリーグリップが出来る人が殆どいないため、身近には手本となるドラマーがいない!
  • 手に反動が伝わりづらく、ショットの「手ごたえ」が体感しずらいので、マスターするのが大変。
  • 筋肉を殆ど使わないので、筋肉の感覚を頼りに練習する事が出来ない。そのため習得には繊細な身体感覚が必要。
  • 日本的グリップでは支点とされている指も慣性力によって常に動き続けるため、極端な脱力が必要。脱力出来ていないと、まったく別のものになってしまう。
  • スティックの振り幅が10cmや15cmでもフォルテシモの音圧・音量が出せてしまうため、見た目的には、パワーのないドラマーと勘違いされてしまうかも?

従来の日本的グリップ

見た目の違い

  • スティックを振り上げた時に指を伸ばし、そのまま振り下ろすか、振り下ろした時に握るのが基本。
  • 基本的に、指を閉じるか開くかの、2種類の形しかない。
  • 親指と人差し指(中指)の支点位置は固定されて動かない。

利点

  • 手の平の触覚や筋感覚を頼りにできるため、とてもマスターしやすい。
  • 音量の小さいタップストロークなどに、とても適している。
  • 音符の間隔があいている(4分音符など)時に、タイミングをとりやすい。
  • 振り上げるスティックの高さ=パワーとなるため、本当はパワーがなくても、見た目的にはパワーのあるドラマーに感じさせる事が出来るかも?

欠点

  • ショットの反動を、スティックの支点位置と手首の2箇所だけで受け止めるため、長年の間に支点位置にはタコが出来やすく、手首は腱鞘炎になりやすい。
  • 明確な支点が存在するため、大きく振り上げると、スティックの力が前方向に流れてしまう。結果、速いスピードではパワーが極端に下がる。
  • 遠心力を利用しようとすればするほど、それと同じだけの求心力が支点位置に発生してしまう。そのため、支点位置を強く握らざるを得ず、摩擦熱によって指に水ぶくれ等のダメージをきたしやすい。
  • 常にスティックの剛性が高くなり、アクセント以外で音色変化がなく、遠近感に乏しい平坦な演奏になってしまいがち。
  • フロアタム等、張力の弱い楽器でのダブルストローク等でタッチがつぶれたり、極端にパワーが落ちる。
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