44. リバウンド・フットワーク&スプリング・コントロール

STEP2 スプリング・コントロール

実は小野瀬は「スプリング・コントロール」という足の奏法を、手の指3本に置き換えることで、大音量を可能としていたのです。

「スプリング・コントロールって何!?」って人のために、まずは一緒にフットペダルを小中学校の理科を使って、考えてみましょう。(実はフットペダルの構造上、下の図のように、正確な扇形にはなりにくい事を、あらかじめお断りしておきます。)


フットワーク 説明写真①は、フットペダルを真横から見た写真です。

バスドラムにセットして何も触れなければ、ビーターは、約2時を指すこの状態になっています。

この状態を0度ポジションとします。


+60°ポジション フットワーク写真①の状態から、写真②の様に、手でビーターを+60度の所まで押してみて下さい。

スプリングによる力で、写真③の-30度ポジションの方向へ戻ろうとしているはずです。
(ここでパッと素早く手を離したら、スプリングの力で一気に-30度のポジションまで移動します。)


-30°ポジション フットワークでは今度は写真③の-30度のポジションへ手でビーターを押してみて下さい。

今度は写真②の+60度のポジションの方向へ、スプリングの力で戻ろうとしているはずです。
ここで手を離すと、ビーターは一気に+50〜+60度ポジションに移動します。


つまり、『フットペダルのスプリング作用』は、-30度から0度は、踏む方向へのサポート力(下り坂?)になるのに対し、0度から+60度までは、踏む方向への反発力(上り坂?)となっているのです。

したがって、0度からフットボードを踏むためには、スプリングの抵抗を受けながら、ビーターを加速させなくてはならないのです。

しかし、フットボードに軽く足を乗せ(乗せるだけで、足の重さで+50〜60度ポジションになります)素早く足を離すと、ビーターは-20〜30度ポジションまで移動します。
そこまでビーターが戻ってきた瞬間、-30度から0度まで、フットボードをスプリングの力に沿って、後押ししてあげれば、ビーターは『スプリングが戻ろうとする力との相乗効果』で、物凄い勢いで加速をし始めるのです。

小野瀬は、まず指の力で、フットボードを押して+50〜+60度ポジションをとった所から、素早く指を離し、ビーターが-30度ポジションにきたところで、-30度から0度までという、ごく短い時間だけスプリングの力に指の力を添えて、ビーターを加速させているだけなんですよ!

つまり、動画の生徒さん達は、0度から+60度まで、体重を乗せ、足の力をも全部出しきって踏んでいるのに対し、小野瀬は-30度から0度まで指で押しているという事なのです。

たとえて言うなら、生徒さん達は、急な上り坂に対して『原チャリでフル加速』しているのに対し、小野瀬は急な下り坂を『ママチャリで加速』している様なものだったのです。

スプリング・コントロール奏法

  • まずは、フットボードの動く角度に要注目!フットボードは全体で約20度動きますが、コントロールに必要なのは、水色の部分の「わずか4〜5度だけ」です(もちろん出したい音によっては踏み込んでクローズにする事も可能)
  • ヒットの瞬間、足はペダルから離れている事にも要注目です!(ですので、1997年2月発表の、ドラミングアドバイス第8回『みかんとフットワーク』にあるように、フットボードに置いたみかんを潰さずに、フォルテの音量で演奏する事が可能なのです!)
  • スプリングコントロールのできていないドラマーにとっては、“今までに体験した事のない程の音圧”が出せる。
  • ビーターをたくさん返すことで、振り幅が約90度前後となり、ビーターにより強く遠心力をかける事ができる。
  • 踏んでビーターを動かすというより、抜く(離す)ことの連続動作が基本。

日本的奏法

ヒールアップ奏法①

ヒールアップ奏法②

ヒールアップ奏法③

  • 日本的フットワークでは、足がフットボードから完全に離れてしまうなど、言語道断とされている。
  • スプリングによる力を、ビーターを戻す事にしか使えない
  • バネの反発力に逆らいながら踏むという「キツイ条件」の中で「スプリング・コントロールの約2倍」の15度近くも、フットボードを動かさなくてはならない。
  • スプリングの反発力に加えて、足裏の接触面が「クッション」の役割をしてしまうので、連打も難しくなり、パワーのロスも大きい。
  • 速く、強く踏もうとすればするほど、スプリングの反発力に対抗するための力が必要になるので、筋肉を鍛えざるを得ない。(しかし悲しいことに、いくら鍛えてもスプリングコントロールを行うドラマーの音圧には到底及ばない(T-T))
  • 遠心力を利用したくても、振り幅がたった60度前後では、ほとんどその恩恵にあずかれない。
  • 小さい音を出す時や、ゆっくりな音符を踏むにはベストマッチ!!

スプリングコントロール奏法をマスターしてしまえば、誰だって「手の指3本」という、とっても小さな力で、大音圧・大音量を出せてしまうのです。

それを「手の指の何十倍も力のある足」で行うのですから、一体筋肉のどこを鍛えればいいのでしょうか?

逆に言えば、この方法さえマスターすれば、超脱力した状態で、身体のどこも痛くならずに、ごく小さな力で大音圧でプレイできてしまうのですよ!

ではここで、実際にバスドラムを『フルパワーで演奏した日本的フットワーク』と、『脱力した状態でのスプリングコントロール奏法』の音圧の違いをご確認下さい。

あえて、スネアもシンバルも、これ以上ないくらいの大音量で叩いていますので、それをバスドラムの音量の目安にして頂けると、音量差がわかりやすいと思います。

動画:日本的奏法とスプリングコントロール

いかがでしょうか?

スプリング・コントロールの音圧・音量を確認して頂けた事と思います。非常に楽に行えるにも関わらず、音圧・音量もバスドラムが鳴りきってしまうくらい出てしまうのですよ!

超一流ドラマー達だけでなく、海外のプロドラマー達にみられるフットワークの原理も、実はこの「スプリング・コントロール奏法」によるものが、ベーシックになっているのですよ!そのせいもあって、日本人ドラマーのほとんどがクローズド(ヒット後ビーターがヘッドに着いたまま)になるのに対し、海外のドラマー達の多くが、日本人ドラマーの倍ぐらいの音圧をオープン(ヒット後ビーターがヘッドから離れる)で出せているのです。

スプリング・コントロール奏法を行っている有名なドラマーとしては、バディ・リッチ、チャド・スミス、デニス・チェンバース、デイブ・ウェックル、etc,例を出すと本当にキリがありません。逆に海外のプロドラマーで、スプリング・コントロール奏法を使っていないドラマーさんを探す方が、かなり大変です。

もちろん、クローズドがダメと言っているわけではありません。ですが、クローズドしか出来なかったり、音量や音圧を極端に下げてしかオープンにできなくては、もったいなくありませんか?日本にも山木秀夫さんのように、オープンと、クローズドを使い分けてリズムパターンを叩き、非常に遠近感のある表現をしている人もいます。

また、スプリング・コントロール奏法で踏み込んでクローズドにすれば、『音のひずんだ大迫力の音圧』も可能なのです!スティックワークに剛性コントロール奏法があるように、フットワークにも剛性コントロール奏法があるのですよ!ですから、皆さんも、スプリング・コントロール奏法をマスターして、ご自分の表現の幅を広げてみてはいかがでしょうか?

ドラム歴4〜5年以上になるドラマーさんでも、スプリングコントロールによるバスドラムの大音量と大音圧を体験しているドラマーさんの方が圧倒的に少ないのは、K’s MUSICに入校された、たくさんのドラマーさんの例からしても、明白です。現役プロドラマーの方でも、K’s MUSICでそのあまりの音圧を体験し、驚かれる人も多いのです。

バスドラムは、本当は、もっともっと鳴る楽器です。スプリングコントロールをマスターすれば、あなたのバスドラムも、今の2倍・3倍の音圧と音量で鳴り始めるんですよ!

このスプリング・コントロール奏法を「無意識にやっているよ!」とか「知ってたよ!」と思う人もいるかも知れませんが、日本ではほとんど使えている人がいない方法なのです!ですので、もし本当にできているかどうか確認したい方は、友人ドラマーに頼んで思いっきり脚で踏んでもらい、そのパワーに、手の指3本で勝てるかどうかをテストしてみて下さいね!足よりも手の方が器用なので、最初は手でできるようにした方がつかみやすいかも知れませんよ!

STEP3 みかんとフットワーク

1997年2月発表のドラミングアドバイス第8回『みかんとフットワーク』の、

「その気になれば、バスドラムのペダルボードにみかんを固定し、みかんをつぶさないで、バスドラムをフォルテの音量で演奏する事も可能なのです。」

という説明を読んだドラマーさん達から、ドラミング電話無料相談で「本当にできるのですか??」という質問をたくさん頂いています。もしかしたら、皆さんの中にも『いくらなんでも、できるわけない!!』と思っている人が多いでしょうか?

ですが、スプリングコントロール奏法を使えば、みかんを潰さずにフォルテで演奏できてしまうのです。なぜなら上記にあるように、踏んでいるのは水色の部分だけなので・・・

え?

ウンチクはもういい?・・・わかりました(笑)

それでは、論より証拠!次の動画をご覧下さい。この動画も、あえてシンバルとスネアを大音量で叩いていますので、それを『目安』にすると、キックの音量がわかりやすいと思います

動画:みかんとフットワーク

いかがですか?実際にやってしまうと「ギャグのネタ!?」になってしまいますが、スプリング・コントロール奏法を使えばこんな事も可能なんですよ!フットボードに両面テープでみかんを固定しているので、その“みかんの重さ”のせいで、ペダルの動きがかなり鈍くなっていますから、とても確認しやすいのではないでしょうか?

スプリング・コントロール奏法を、あなたが本当にできるようになっているかどうかを確認する方法のひとつとして、興味のある方は、実際にみかんを置いてやってみてはいかがでしょうか?ですが、動画にもある通り、日本的奏法で踏むと、みかんは一発で潰れてしまいますので、よく注意してやって下さいね!(今回は触れませんが、重心位置もかなり重要になってきます。)

「みかんを潰してスタジオのお兄さんに怒られた!」「みかんの汁でペダルが錆びた!!」「食べ物を粗末にするなと怒られた!!!」等の、責任は一切K’s MUSICでは負いかねますので(笑)、自己責任で行って下さいね(笑)

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