38. 聴力の盲点と弱点

前回のドラミングアドバイス(本能を刺激する音=身体共鳴)が、予想外の大反響を頂きました。「目からウロコが落ちた」「スランプから抜け出せた」等、わざわざ感謝のお電話を下さるプロドラマーの方も多数おられ、私達K’s MUSICとしても喜ばしい限りです。そこで今回は“身体共鳴”について、科学的な側面から解説しようと思います。

共鳴する骨 一覧表

  • 絶望的な話ですが、鼓膜で捉えた音を脳に伝える有毛細胞は、年齢と共にどんどん減っていきます。そして死んだ細胞は二度と再生する事はありません。医学の世界でも「人間は生れた瞬間から聴力が衰えてくる」ことは、すでに常識。10年後、あなたの聴力は今より確実に衰えています。
  • 個人差もありますが、人間の鼓膜は、約100dB以上の大音量では歪んでしまい、その歪んだ音しか脳に伝えることができません。つまり、100dB以上の大音量になるバンド演奏中に、鼓膜(耳)だけで全ての音を把握するのは、絶対に不可能です。
  • 音楽家にとっての「耳を鍛える」とは“脳の音色識別能力”を向上させるということになります。そのためには、鼓膜の空気伝導以外の音色識別能力である、骨伝導聴力が必要になります。
  • 上の図は、医師で聴覚心理音声学の権威として知られる、アルフレッド・トマティス博士の骨伝導聴力に関する研究成果の一部です。この医学的研究から言えることは、音の周波数の高低によって人体の共振する部位は異なっているという事実です。
  • あなたが奏法を変えることで、あなた自身の骨盤を強く共振させる音が出せるようになれば、それは同時に聴き手の骨盤をも共振させる音が出ているという事なのです。つまり“身体共鳴”とは、聴き手の本能に直接働きかけることで自律神経にまで影響を与え、迫力や感動を聴き手に実感させることができる方法です。
  • ドラマーに限らず、マジメに音楽を学ぼうとする人ほど、興味がフレーズやパターンにいってしまって、音色が二の次になる傾向があるようなので注意が必要です。
  • 音は脳に伝わって初めて認識されます。“脳の音色識別能力”をより向上させるためには、意識して全身の振動を感じることです。そうすることで感性が増し、先鋭になります。ドラミング(音楽表現)の向上には、こうした“意識改革”が必要不可欠です。
  • 「音楽的な耳を持とう」という言葉は、なぜか、音楽的な耳を持てなかった人達が共通して口にするようです。ですから、その理論も根拠のない理想論に終始するケースがほとんどではないでしょうか?

K’s MUSICでは、人間科学の理論に基づき、「音楽的な耳を持つための具体的な手段 」をレッスンしています。

2003年1月